いけない/道尾秀介/あらすじと感想

いけない

 

最初はさら〜っと読んで、もう一度読み直して・・と、ミステリーの場合は2度読むことが多いのだが、「いけない」は特に、 ”絶対に”一度読んだだけではよく分からない。「もう一つの真相」など分かるわけない。2度、3度と読み込んでいくと、全く違う景色が見えてくる。

 

 

あらすじ

 

4編の短編が複雑に絡み合うミステリーとなっている。舞台は白沢市(はくたくし)、蝦蟇倉市(がまぐらし)という名の街。

 

第1章:弓投げの崖を見てはいけない

 

結婚5周年の妻へのプレゼントを買い帰宅途中だった安見邦夫は、弓投げの崖の先のトンネルの出口で前方の車と衝突した。

3人の男たちから証拠隠滅を図られ、顔面を強打され続ける。

悲嘆にくれる妻・弓子に近づく宗教団体・十王還命会。弓子と同じ大学だった警察官・隈島は、後輩の竹梨刑事と共に事件の真相に迫っていくが・・

 

 

第2章:その話を聞かせてはいけない

 

10歳の中国の少年・珂(カー)は5歳の時日本へやってきた。中華料理を営む家庭は貧しく、万引きをするため文具店に立ち寄り、偶然殺人事件に関わってしまう。同級生の山内を助けた縁で、恩にきられ友達になる。

しかし、文具店のおばあさんに見たことを喋ってしまったばっかりに、危険が忍び寄ってくるのだった。

 

 

第3章:絵の謎に気づいてはいけない

 

第1章の最初の事件から7年後、十王還命会の営業をしていた宮下志穂が自宅で殺害される。

隈島の部下だった竹梨は、新人刑事の水元と共に、捜査に当たってゆく。

十王還命会蝦蟇倉支部の支部長・守谷に疑いの目を向けるも、セキュリティー特化のマンションに押し入るのは不可能だと思えた。

そんな折、弓投げの崖でマンションのオーナー・中川の死体が発見され、中川のものとみられる手帳も発見された。中には宮下志穂の遺体と見られる絵と共に謎の文字が残されていた。

 

 

第4章:街の平和を信じてはいけない

 

弓投げの崖の近くにできた公園で待ち合わせた竹梨と安見。安見は竹梨に手紙を託し、自分と別れてから読んでくれと言って、その場を立ち去る。近くで自転車に乗っていた少年たちに声を掛けた竹梨の隙を見て、竹梨のカバンから手紙を取り戻す安見。しかし、その手紙は彼のものではなかった。

 

 

 

感想

 

読んでみて・・・あれ?どうなってるのか?と不思議な第1回目読了。

 

さて、2回目を読もうとすると、表紙裏に謎の問いかけがある。

第1章・・死んだのは誰?

第2章・・なぜ死んだの?

第3章・・罪は誰のもの?

終章・・・わかった?

 

そして各章の最後に謎の写真が載っているが、このラスト1頁こそが大ヒントとなっている。

各章の内容をじっくり読むとヒントが載っているのだが、最初は見過ごしてしまっていたよー。むしろ反対のことを考えていたりして、お〜そうだったか!と、分かるとモヤモヤがすっきり。モヤモヤしたまま終わる可能性もあり・・かもね。

 

それぞれの章が独立した短編集かとおもいきや、最後に全てが繋がっていることがわかる。

 

だけどさー、結果的には「未解決事件」となるんだよねー。偶然とはいえ証拠隠滅となって、人がたくさん死んでいるわりには、犯人が捕まらないという。。

 

少年2人の未来も、平和・・なわけがない。

 

 

>>いけない

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想

 

ここからはネタバレですので未読の方はご注意ください。

 

 

第1章で安見邦夫がハンドルに顔面を何度も強打され、3文字の言葉を残しながら、「この世で見た最後のもの」が男の顔・・・というくだりで、安見は死んだと思っていたら、あらら・・生きていたのか。 冷静に考えると顔面強打だけで死に至ることは少ないだろけど、もう最初から道尾マジックにかけられてしまったみたいだ。

 

弓子と学生時代付き合っていた隈島とが距離を縮め、いい関係になっていく・・かと妄想していたら、どっこい、安見は生きていた! 失明しつつも復讐の鬼と化して。弓子と隈島のロマンスはあえなく消滅ー笑

 

安見と衝突した車の若者3人のうち、マサ、ヒロの兄弟と、首謀者はナオ、尚人と後半で分る。そして安見と同乗していた息子の直哉が亡くなり、生死の境を彷徨う安見が口にだしていたのは息子の名前で、殺害に走った原因もはっきりする。

 

1章のラストは、ゆかり荘近辺の地図となっている。

<死んだのは誰?> 十王還命会の吉住が運転する車が猛スピードでゆかり荘の前を走り抜けようとしたとき、右側から現れた人間が轢き殺される。商店街の路地を通り抜けて走ってきた隈島が死んだものと思われる。安見の殺人の真相を突き止めたっぽい隈島が死に、真相は闇に葬られる。

 

2章のラストは、おばあさんの夫が遺体で発見され、テレビのインタビューに答えている場面。後ろの白い軽に乗り込もうとしているのは「HAPPY」のトレーナーを着た山内。 山内が珂(カー)を助け、二人を殺したものと思われる。

<なぜ死んだの?> 文具店のおばあさんの夫を殺したのは茶色い革ジャンの甥っ子。放蕩夫から金をむしりとたれたおばあさんを助けるため殺した?にしては動機が弱い。甥っ子の子供が実は山内で、山内の殺人を隠蔽するべく動いた?

ホームレスのおじいさんがおばあさんの夫で、おじいさんから激しく叱責され、てを酷くケガした山内が恨んでの犯行?(けど、山内の方が悪いんだけどねー)

ラストの写真には軽自動車に乗り込む山内の姿があり、おばあさんと甥っ子を殺し、珂(カー)を助けたのだろう。

どちらにしても複雑な家庭の事情が垣間見られる。

 

3章のラストは中川の手帳にあった絵と、「電話中に外した?」に向かって握られたボールペン。

上段はドアの外に立つ中川と守谷で、下段の絵が本編とは違っている。

スマートロックのトリックに気づいた中川が守谷に殺される。 そして、モンブランのボールペンを持っている竹梨が、守谷を庇って水元を殺す。竹梨は十王還命会の会員だったのだ。

家庭の事情は様々なれど、ひとたび怪しげな宗教にのめり込むと、教祖?のために殺人さえもいとわないという、空恐ろしい事実が待っているとは。警察官だからと供述も信用され、事実がねじ曲がってしまうなんで怖いですねー。

 

終章のラストは白い5枚の便せん。

<わかった?> わかったよ。1度目の読みでは分からなかったけどね。 読めば読むほど見えてくるものがある。

安見は今までやってきたことを5枚の便せんにしたため、竹梨を呼び出す。竹梨もまた、自分がやってきたことを5枚の便せんに書くも1年以上もの間、上司に渡せずにカバンの中に入れたままだった。 手紙を渡した安見が心変わりし、カバンの中から手紙を回収するが、安見が取った手紙は、実は竹梨の手紙だった。

竹梨がカバンの中の手紙を開くと、便せんは真っ白で何も書かれていなかった。安見が告白文を弓子に代筆してもらったものの、弓子が夫に渡したのは白紙で、夫を思いやる為の行為だったろう。

 

竹梨の手紙は安見によってバラバラに引き裂かれ、安見の手紙は弓子によって闇に消える。

二人の少年、山内と珂(カー)は、「なんか平和」と言いながら自転車をこいでいく。

 

弓投げの崖は、多くの場合殺人さえも自殺に変わり、宗教団体が人を狂わせる。一見平和な街に潜む恐怖は底知れないものがあるようで。。

 

もう一度読み直すと、また違った景色が見えるのだろうか。

 

 

 


スポンサーリンク




スポンサーリンク



サイト内検索

新着記事

カテゴリー

スマートフォン

運営者

アーカイブ

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM